人事院勧告2019 全教の声明 お読みください

2019年人事院勧告について(声明)

2019年8月7日

全日本教職員組合 中央執行委員会

 

1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。その構成は「職員の給与に関する報告」および「勧告」、「公務員人事管理に関する報告」からなっています。

 

2.民間賃金調査結果にもとづき、今年4月における官民較差は、月例給、一時金ともに6年連続でプラスとなり、国家公務員給与が民間給与を

「平均387円、0.09%」下回っていたとして、行政職俸給表(一)を改定して

大卒程度初任給を1500円、高卒者初任給を2000円引き上げることとしました。これを踏まえ、30歳代半ばまでの職員が在職する号俸について改訂(平均改定率0.1%)を行うとしています。

 

一時金については、民間の支給割合が4.51月であるとして、0.05月引き上げ4.50月分としたうえで、今年度については引き上げ分を12月期の勤勉手当に充て、来年度以降については、0.025月分ずつ6月期と12月期の勤勉手当に充てるとしています。

 

手当では、住居手当の見直しが行われ、手当の支給対象となる家賃額の下限を4000円引き上げ、現行の1万2000円から1万6000円とし、これにより生じる原資を用いて、手当額の上限を1000円引き上げ、現行の2万7000円から2万8000円としました。

 

3.今回の改訂では、実質賃金が低下する一方の高齢層職員に対する配分は全く行われませんでした。昨年3月31日をもって国家公務員の「給与制度の総合的見直し」が完了したことに伴う現給保障が廃止され、高齢層を中心に最高で1万円を超える賃下げが起こりました。本年の人事院勧告における給与の引き上げ幅は公務労働者の生活改善には程遠いものです。

 

 なお、地域最低賃金が目安額通り引き上げられると、高卒初任給(行(一)1級5号)を2000円賃上げしたとしても、時間給を俸給月額から計算すると約897円となり、目安額から想定される最低賃金の全国加重平均901円を下回ることになります。地域手当がつかない地方では一層の公務員離れ、青年層の地方からの流出が懸念される事態です。

 

また、一時金の引き上げがこの間すべて勤勉手当に充てられていることは、「勤務実績に応じた給与を推進するため」と報告で述べられているように、政府・人事院が能力・実績主義をさらに拡大・強化しようとしていることの証でもあります。

われわれの要求に応えない極めて不満な勧告であり強く抗議するものです。

 

4.住居手当の「見直し」により、家賃5万9000円未満についてはすべて減額となります。地方勤務の単身若年層の多くは減額となり、賃金の地域間格差が拡大するとともに、若年層の賃上げの効果が打ち消されるものとなりかねません。減額が2000円を超える職員については、1年間、所要の経過措置を講じるとしていますが、政府の国家公務員宿舎の削減や使用料引き上げなどの住宅政策により生じた改悪であり、決して容認できるものではありません。

 

5.「公務員人事管理に関する報告」では、「人材の確保」について、採用試験の申込者数の減少にふれ、受験者層に応じた施策を展開し人材確保の幅広い検討が必要であると言及する一方で、「能力・実績に基づく人事管理の推進」について、分限処分に関する運用の徹底など必要なとりくみを行うとして、政府方針である「人事評価における能力・実績主義の更なる徹底」に追随するものとなっています。

 

「勤務環境の整備」については、「勤務時間等に関する取組」として、本年4月から設定された超過勤務命令の上限等について、制度の運用状況を把握し必要に応じて各府省を指導し、なお恒常的に長時間の超過勤務を行わざるを得ない場合には、業務量に応じた要員が確保される必要があることに言及しています。また、「不妊治療と仕事の両立」では、重要な課題としながら、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成にとどまっていることは極めて不十分なものです。

 

わたしたちがこの間、臨時・非常勤職員の待遇改善を強く求めてきたことを反映し、昨年の結婚休暇や慶弔に係わる休暇の取得用件撤廃につづいて、夏期休暇を新設することとしました。均等待遇にはまだまだ程遠いものですが、粘り強く要求運動を続けてきた成果であり、今後もさらなる前進を強く求めていく必要があります。

 

「ハラスメント防止対策」については、人事院として行ってきた「公務職場におけるパワーハラスメント防止対策検討会」の結果も踏まえて、「新たな防止策」を講じることとしました。「定年の引き上げ」についても昨年の意見の申出を踏まえ、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」で「公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる方向で検討する」とされる政府方針に対して、定年引き上げを実現するための措置が早期に実現されるよう改めて要請するとしています。

 

6.全教・教組共闘連絡会は、全労連公務部会・公務労組連絡会が提起する人事院に向けた公務労働者の賃金改善署名では3万1598筆(公務労組連絡会全体では11万2219筆)を集約しました。

また、「安倍9条改憲阻止!今すぐ最賃全国一律1000円以上!公務員賃金改善!を求める19夏季闘争6・21中央行動」や「公務員賃金改善!非常勤職員の処遇改善!定年引き上げの実現!を求める19夏季闘争7・25署名提出行動」に全国からのべ200名が参加し集会を成功させました。

 

全教は、安倍9条改憲を許さないたたかいを軸に、「8時間働けば普通にくらせる社会」の実現に向けて、大企業の内部留保を社会的に還元させることや全国一律最賃制の確立など、すべての労働者の大幅賃上げ、労働者・国民のいのちとくらしを守り、今すぐどこでも最低賃金1000円以上へ引き上げることなどの課題と結合して、教職員の長時間過密労働解消をめざし、「1年単位の変形労働時間制」の導入ではなく教職員定数の抜本的な改善を求め「せんせい ふやそう」キャンペーンに結集したとりくみを展開しながら夏季闘争をたたかいました。

 

7.今後、教職員給与を含め地方確定闘争では、教職員をはじめすべての公務労働者の生活改善につながる賃金引上げ、すべての世代における賃金底上げ、会計年度任用職員制度の導入をふくむ臨時教職員の待遇改善を基本要求にかかげ、要求の前進をかちとることが重要な課題となります。また「学校における働き方改革」を教職員の長時間勤務解消として具体化させることや「1年単位の変形労働時間制」導入を許さないとりくみも求められることになります。

 

全教は、子どもたちの教育に教職員が力を合わせて、生活の不安なしに専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会にあらためて求めるものです。同時に、安倍9条改憲を許さず、憲法改悪と一体の安倍「教育再生」反対、教職員の長時間過密労働の解消、地域格差拡大反対、成績主義賃金の拡大を許さないたたかいに引き続き全力をあげる決意です。

 

                            以上

国の人事院勧告・報告を経て、各県・各政令市の人事委員会への要請を行い、勧告を経て、各県教委、各政令市教委との賃金・勤務条件の改善・前進に向けての要請行動や交渉が始まります。

ぜひ、注視して、意見、疑問、要望を伝えてください。

例 「なんで~💢 97年から給料あがってな~い」